ビデオゲーム映画の名作が生まれない13の理由

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ご無沙汰しております。連日の炎暑、いかがお過ごしでしょうか。 

映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』。私は未見なのですが、堀井雄二さんは劇画村塾出身だし、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』というハイレベルなマンガ化作品もあるし、ドラクエのCGアニメ映画化は「骨太なストーリーの傑作映画」みたいな作品になるんじゃないかと予想していたんですけど……そう簡単には行かないものなんですね。

そもそも、一般論としてなぜ「ビデオゲームの映画化」は上手く行かないのか、海外ではどのように考察されているのかを調べてみたところ、ビデオゲーム映画制作の難しさが箇条書きで上手くまとめられた記事「優れたビデオゲーム映画を作るのが物理的に不可能な13の理由(13 Reasons It's Physically Impossible To Make A Good Video Game Movie )」がありました。

以下に要約を引用します。


1. 観客はビデオゲーム映画を真面目に見ない

  • これまでの数々の「駄作」が前例になっていて、お客さんはみんなそれを覚えている。
  • ビデオゲーム映画の傑作が1〜2作品でも生まれない限り、観客からそのトラウマを消すことは難しい。

2. 映画化するゲームタイトルを間違えている

  • 映画化に向いている作品が映画化されず、向いていない作品が映画化されて失敗作になる。
  • バイオハザード』よりも優れた映画になる可能性のあるゲームタイトルがまだまだ埋もれているはず。

3. ストーリーが適切ではない

  • モータルコンバット』『ストリートファイター』のようなゲームはそもそもストーリーをメインにしたゲームではない。
  • そうしたゲームの映画化なら、映画制作者はゲームの本質をとらえて独自の物語を作り出すことも理論的には可能なはず。
  • しかし、映画は本質的に「プレイできず見るだけ」のため、ゲームを再現したアクションを見た観客には(ゲーム的な)報いがなく、ストーリーはその言い訳のような存在になりがち。

4. 原作のゲームに忠実すぎる

  • ゲームと映画では、物語の形態がまったく違う。そのゲームの成功した要素を映画で再現してもうまくいくとは限らない。

5. たいてい演技がひどい

  • ビデオゲーム映画は、俳優さんのワースト演技を引き出してしまうことが多い。

6. 原作のゲームに忠実ではない

  • プロデューサーとしては、原作ゲームのファンよりも「その他の大勢の潜在顧客」を惹きつけたい。
  • 原作に忠実でなければゲームファンを遠ざけてしまうが、忠実にしたらその他のお客さんを遠ざけることになる。

7. 映画はインタラクティブではない

  • ゲームはプレイヤーに選択肢と機会を提供する。インタラクションがすべて。
  • その性質を映画に翻訳することは絶対に不可能。

8. 見栄えの良さにこだわりすぎる

  • ビデオゲーム映画は、見た目の良さにこだわるあまり、それ以外の要素に悪影響を及ぼしがち。
  • 同じくらいの注意と正確さが脚本にもあれば、映画はもっと良くなるはず。

9. 冒険よりもアクションシーンを優先する

  • ほとんどの映画監督は、ゲームのパズルやミステリーの要素を嫌悪している。
  • トゥームレイダー』も、もう少しバランスを見直せば『インディ・ジョーンズ』のような作品になったかもしれない。

10. 原作を改悪する

  • (原作を必要以上に改変しても構わないという前例となってしまったという意味で)その元凶は『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』。
  • 大量の間違った脚色があるが、そのいくつかは理解ができないレベル。

11. 映画制作者がゲーマーではない

  • プロデューサーや監督がゲームファンであることは滅多にないため、何がビデオゲームを特別なものにしているのかが理解できないのかもしれない。
  • ボクサー役の俳優が「ボクサーであること」の意味を学ぶのと同じように、ビデオゲーム映画の監督はまずゲームを徹底的にプレイし、ゲームのことをちゃんと理解するべきだ。

12. 2時間の中にいろいろ詰め込みすぎる

  • ゲームは何時間もプレイするが、映画は90〜150分程度。ゲームのように情報を入れ込むことはできない。

13. 映画には「チェックポイント」がない

  • 「失敗して死んだりする」のがゲームの良さで、その挑戦があるからこそ楽しい。
  • 映画では「主人公が死んでから生き返らせ、また挑戦させる」ことはできない。
  • その結果、ビデオゲーム映画の主人公は「不死身」か、少なくとも「むちゃくちゃ運が良い」人物になってしまう。

任天堂さん、「レトロゲーム専用ゲーム機」を作ってくれませんか


言いたいことは上の絵でだいたい言いつくしてるので、以下は補足・蛇足です。

クラシックコンソールミニ(仮称)

  • 昨年発売された「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」はとても楽しかった。
    • 次はスーパーファミコン版の「ニンテンドークラシックミニ」が発売されるという噂もある。
    • とはいえ、単一機種の厳選された30タイトルしか遊べないというのは何だかもったいない
    • どうせなら色々な機種のソフトが遊べて、追加購入もできる新たなゲーム機にすれば、ユーザーが長く楽しめる製品となり、持続可能なビジネスにもなるのではないか。
  • スターターキットには、スーパーファミコンタイプのガワが付属。
    • あくまで「ガワ」で、無くてもプレイに支障はない。
    • それ以外の機種タイプのガワは別売りで、それぞれの機種の名作タイトルがダウンロードできるクーポンが付いている。
  • ソフトはWi-Fiでダウンロードして追加することができる。
    • 容量が足りなくなったら削除し、後で再ダウンロードが可能。
    • セーブデータはSDカードに暗号化されて保存。PCでバックアップ可能。
  • 個々のソフトは、例えばクラシックコンソールミニ版・Switch版ともに500円で、両方買うと700円(WIi U版と3DS版の『スマッシュブラザーズ』のDLCのようなイメージ)。
  • コントローラーはBluetooth接続で、公式にはスーパーファミコン型だけを販売(本体に一つ付属)。
  • WiiWii U→Switchと、世代が変わるごとに同じバーチャルコンソールタイトルを買い直し続けるのは、ユーザーとしては正直しんどい
    • このクラシックコンソールミニ用にソフトを一度購入すれば、任天堂主力ゲーム機の世代交代とは無関係にずっとレトロゲームを楽しむことができる
    • ただし、任天堂主力ゲーム機の世代交代を経てもなおクラシックコンソールミニがビジネスとして継続していなければ、従来のバーチャルコンソールと大差ないモノになってしまう。

要は「カートリッジの吸い出しができないレトロフリーク」のようなイメージです。任天堂さん、いかがなもんでしょうか。

ハイラルの住民票が欲しくなる『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』

任天堂Wii UNintendo Switch■2017年3月3日■ アクションアドベンチャー■6,980円(税別)■★★★★★
1986年から続く、任天堂の人気シリーズ最新作。広大な世界を旅して数多くの魔物と戦い、各土地に住む人々と出会いながら、魔王ガノンの討伐を目指す。オープンワールドが採用され、かつてない自由度の高さが実現された。Nintendo Switchのローンチタイトルであり、任天堂最後のWii Uタイトルでもある。

公式サイト

以前「ゲームセンターCX」で有野課長が『超魔界村』(1991年)をクリアした時、有野さんは「僕は魔界村の住民票はいりません」という言葉で番組を締めた。それ以来、私はゲームの面白さとはまた別に「住民票が欲しくなるかどうか」を考えるようになった。特にオープンワールド型のゲームでは「住んでみたいかどうか」は重要な指標ではないかと思う。

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『スーパーマリオラン』を機に「優良な有料ゲームアプリ」がもっと増えてほしい


iPhone 7の発表と同時に公開された『スーパーマリオラン』が、12月15日に1,200円で発売されることが発表となった。一部のプレイが無料、1,200円を支払うとすべての内容がプレイできるという。

最初の印象では、1,200円は高いと感じた。というのは、任天堂さんは『スーパーマリオラン』を「Nintendo Switch3DSといった“本業”のセールスを促すための戦略製品」として考えてるんだろうな、と勝手に解釈していたからだ。せいぜい360円ぐらいで販売して、「もっと面白いマリオはNintendo Switch3DSにありますよ」と橋渡しする、ある意味「トロイの木馬」みたいな役割。

でも、今回の発表を見る限りでは、少なくとも『スーパーマリオラン』はそうではなく、「1,200円分の価値のあるアプリを1,200円で販売して利益を出す」つもりで任天堂が制作・販売するゲームソフトなんだと思う。「任天堂レベルの企業」が「高いクオリティーの買い切りアプリ」を「それ以外の課金要素いっさいなし」で販売するとしたら、1,200円は妥当な価格だと言っていいんじゃないだろうか。プレイしてみないとわかんないですが。

むしろ、有料ゲームアプリ市場が相当落ち込んでいる現在、この『スーパーマリオラン』を機に「クオリティーの高い、買い切りタイプの有料ゲームアプリ」がもっと増えてくれたらいいのになあ、と切実に思う。
私は、たとえば『Downwell』のような優れた有料ゲームアプリが他に存在するなら、ぜひ購入したいと思っている。でも、少なくとも現時点ではそれを見つけるのはかなり難しいし、有料ゲームアプリを開発する側も現在の状況では躊躇せざるを得ないんだろうと思う。

アップルさんのApp Storeの「おすすめ新着ゲーム」はいつも参考にさせていただいてるけど、「無料ゲームアプリ」と「買い切りの有料ゲームアプリ」を混在させず、明確に分けて紹介してもらうことはできないもんでしょうか。

たとえばニンテンドー3DSソフトの公式ページみたいな体裁で、「おすすめの有料ゲームアプリ」のリストをアップルさんが公式に運営・更新してくれたら非常に有難いんだけど、やっぱり無理っすかね。



関連リンク:

スーパーマリオ ラン | 任天堂

品薄続く『ニンテンドークラシックミニ』、一方アメリカでは……

任天堂の最新の英知を結集したはずのWii Uが最近あんな感じで、その一方ではこの究極の思い出物件『ニンテンドークラシックミニ』の方がよほど世間の耳目を集めている、というのが皮肉というか、さすがは任天堂さんというか……。

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Wii Uよ、引退する前に「旧WiiソフトのGamePad単体プレイ」を実現してはくれまいか

Wii Uの生産が終了するという報道があった。任天堂さんは否定されているとはいえ、ニンテンドースイッチの発売時期を考えれば妥当なタイミングにも思えるし、Wii Uの現状をかんがみれば「遅かれ早かれ」の6文字が脳裏に浮かばざるを得ない。
それはそれとして、Wii Uの引退前にぜひ任天堂さんにお願いしたいことがある。何とかして「WiiソフトのGamePad単体プレイ」を実現していただけないもんでしょうか。

もちろん現時点でも旧WiiソフトはWii Uでもプレイできる。でも「Wiiリモコンがなければ操作できない」という致命的な制約が存在する。GamePadで旧Wiiソフトをプレイする場合は、公式サイトの言葉を借りると「テレビの代わりとしてお使いいただく」ことになる。テーブルにGamePadを置いて、その前でWiiリモコンとかヌンチャクとかを持ってプレイするのである。せっかくGamePadには任天堂クオリティの十字キーやらアナログスティックやらが付いているというのに。

GamePad単体で旧Wiiソフトをプレイするにあたって、最大のネックは「Wiiリモコンポインティングデバイスとして使うソフトでは、画面をポイントできない」こと。でも、画面上に「仮想ポインタ」をオーバーレイ表示してGamePadのスティックやタッチパネルで操作することで、Wiiリモコンで画面をポイントする操作のかわりになるはず。って、任天堂社内ではとうの昔に検討されていることだとは思いますけども、まあ聞いてください。

「仮想ポインタ」はGamePadのRスティックまたはタッチパネルで操作。画面外をポイントする操作も用意。旧WiiではWiiリモコンとヌンチャクで合計ふたつ存在する加速度センサーは、GamePadのLスティックボタンで切り替えて使う(ジャイロセンサーはヌンチャクには入っていないので切り替えなくていいはず)。

任天堂社内はもうニンテンドースイッチのことで大わらわだろうとは思うけど、Wii Uディスコンになる前に一応書かせていただいた。
これまでの任天堂さんの後方互換に関する手法からすると、こういう「前世代のハード環境にソフトウェアのレイヤーを乗っける」みたいなのは論外だし、だからこそ極めて高い互換性が担保されているんだとは思う。もしWiiリモコンの「仮想ポインタ」みたいな仕組みが無理なら、せめてGamePadに付いているスティックやボタンをクラシックコントローラの代わりに使えるようにしてはもらえないでしょうか。

任天堂、次世代機「ニンテンドースイッチ」で「2画面主義」から決別か

ついに任天堂さんが次世代機・NX(仮称)こと「ニンテンドースイッチ」を正式に発表しました。

「バッテリー内蔵の液晶タブレット的な本体」+「ドック(テレビに接続されている)」+「本体にはめ込んでも、あるいは外しても使える、左右セパレート型のゲームコントローラ」が、「ニンテンドースイッチ」の基本的な構成のようです。液晶付きゲームパッドがある種のダム端末だったWii Uとはまったく異なります。
公開された映像は、ひとりで家の中でプレイしてからそのまま外へ持ち出したり、一台あるいは複数台の本体を持ち寄ってプレイしたり(左右のコントローラは90度傾けてそれぞれ一台のコントローラとして使える模様)、さらには大規模なゲーム大会で選手が自分の(コントローラではなく)本体を持参してクレイドルにセットしてプレイしたり……といった、これまでの据え置き機とは一線を画した内容となっていました。

ちょっと意外だったのは、この液晶タブレット風の本体をドックに設置すると「液晶が隠れて見えなくなる」という点です。2006年のニンテンドーDSから始まって、ニンテンドー3DS、そしてWii Uに至るまで「画面がふたつあること」にこだわりを持っていた任天堂さんですが、この次世代機では「テレビにつないでいる時は本体の液晶を使わない」という構成になっていると思われます。正直言ってWii Uの「テレビ画面+ゲームパッドの画面」の2画面構成がゲーム性に画期的な変革をもたらした……とは言いづらいですし、「据え置き機の画面をふたつでなく一つにする」というのはある意味では英断なのではないかと思われます。もし2012年の時点でこの「ニンテンドースイッチ」が登場していたら……などと思わなくもないですが。

この液晶一体型の本体にタッチパネルが付いているかどうか、あるいはドックにGPUが内蔵されているかどうか……など、まだまだわからないことも多々あるのですが、「この液晶タブレット風の本体に、ゲーム以外の使い道はあるのか」も気になるところです。