1991年のファミコン通信ムック本のレビューが面白い


この「オールゲームカタログ1991」は、ファミコン通信の編集部によるムック本。全1459本という膨大な作品のデータが高い密度で収録されている。本書が発行された1991年はスーパーファミコン発売の翌年で、先行していたPCエンジンメガドライブなどのライバルがしのぎを削っていた年だ。
この本がすごいのは、それぞれのプラットフォーム向けのゲームについて、5つ星評価と長所・短所レビューが写真付きで掲載されているところ。レビューはゲーマーの目線を保ちつつ、実際にゲームを購入しようと考えている読者の参考になる内容で、殿堂入りしたような名作ソフトやゲーマー好みのソフトでも手加減がない。

たとえ名作でも


ドラゴンクエスト ★★★★
○洗練されたゲームバランス。鳥山明のモンスター。誰でもクリアー可能。ローラ姫と宿屋。
×単調な戦闘。カニ歩きの主人公。たいまつ。平面的な竜王ダースドラゴンラリホー

無条件に星5つにしても良さそうな作品だが、星は4つにとどまっている。なお、続編である『ドラゴンクエスト2』『ドラゴンクエスト3』には星5つの評価が付いている。

スターラスター ★★★
○コックピットの臨場感。難易度が選べる。スッキリしたグラフィック。
×位置のつかみにくいレーダー。難しい敵ビームのよけかた。BGMなし。

隠れた名作として名高い。私は当時何度もクリアするほど好きな作品だったが、冷静に見れば万人には勧めがたい内容で、星3つが妥当な線という気がしてくる。

リンクの冒険 ★★★
○テクニック重視の作り。豊富な地形。神殿のBGM。イキなメッセージ(ロトの墓)。
×個性的なキャラを育てるとセーブ時に損。イマイチわからない物語。ハードな難易度。

ゼルダの伝説シリーズの2作目にあたる作品。シリーズ唯一の横スクロール型アクションで、確かにちょっと消化不良な感があった。「ロトの墓」は本当にゲーム中に登場する。

5つ星


かといって満点評価を出し惜しみしているというわけではなく、傑作タイトルには(有名・無名に関わらず)しっかり星が5つ付いている。

ザナック ★★★★★
○気分をあおるBGM。ハデな特殊兵器。元祖超高速スクロール。豊富な敵の攻撃パターン。
×カタい敵キャラ。どれも同じようなボス要塞。下手な人ほどキビシイAI。

ディスクシステムの名作。片面しか使っていないとは思えない優れた作品だった。

蒼き狼と白き牝鹿 ジンギスカン ★★★★★
○血縁やオルド、コマンド使用にともなう体力低下などの人間ドラマ。やっぱりオルド。
×嫁をやらないと反乱する武将。細分化しすぎのコマンド。第19国日本、源頼朝の高年齢。

光栄の歴史シミュレーション。「オルド」は、ある意味で当時の光栄らしい感じがする。

きね子 ★★★★★
○気のきいたBGM。設定できるピースの数。何度見てもあきない完成画面。
×10枚しかない絵。たぬきのはらづつみ。よくわからないタイトル。

当時は斬新だった、ばらばらのピースが単体で動くパズル。タイトルは『キネティックコネクション』の略。

出来のよろしくないゲームに容赦なし


一方で、出来が今ひとつの作品に対してはまったく容赦がない。この手加減も遠慮もないレビューが本書の一番の見所かもしれない。

バード・ウィーク 
○明るくて可愛いノリ。一転して涙を誘う昇天シーン。道徳的な考えが伝わる。
×構成が単調でトロい。爽快感に欠ける。やる気の起きない展開。単なる思いつき。

子猫物語 
○ほのぼのチックなグラフィックと音楽。映画同様かわいいチャトラン。
×ねずみに触れただけで死んじゃうチャトラン。単純なくせに難しい。変なステージ。

もっともあぶない刑事 
○タカとユウジの2P。ひんぱんに出て来るパワーアップアイテム。3Dボーナス面。
×ちゃちなグラフィック。難のある操作性。変わりばえのしない面構成。しつこいザコ。

ダウボーイ 
○爆弾に導火線をひく、火遊び的楽しさ。はしごによる敵アジト攻略。変わった画面構成。
×見るにたえないグラフィック。小さく見にくい敵の弾。アイテムの使い方がわからない。

スペースハリアー 
○3Dで迫ってくる敵キャラクター。敵を撃つだけのシンプルな内容。多彩なステージ。
×小さいキャラクター。キャラクターの動きがトロい。情けないBGM。移植失敗。



当時は、現在のように口コミ評価やメタスコアみたいな情報をネットでチェックするような手段がまったく存在せず、ゲームソフトの購入自体がバクチのようになることも珍しくなかった。それだけに、こうしたレビュー記事は本当に有り難いものだった。ゲームの史料的な意味合いも含めて、電子書籍のような形で復刻して欲しいと思う。