ハイラルの住民票が欲しくなる『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』

任天堂Wii UNintendo Switch■2017年3月3日■ アクションアドベンチャー■6,980円(税別)■★★★★★
1986年から続く、任天堂の人気シリーズ最新作。広大な世界を旅して数多くの魔物と戦い、各土地に住む人々と出会いながら、魔王ガノンの討伐を目指す。オープンワールドが採用され、かつてない自由度の高さが実現された。Nintendo Switchのローンチタイトルであり、任天堂最後のWii Uタイトルでもある。

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以前「ゲームセンターCX」で有野課長が『超魔界村』(1991年)をクリアした時、有野さんは「僕は魔界村の住民票はいりません」という言葉で番組を締めた。それ以来、私はゲームの面白さとはまた別に「住民票が欲しくなるかどうか」を考えるようになった。特にオープンワールド型のゲームでは「住んでみたいかどうか」は重要な指標ではないかと思う。

『GTA5』にしても『スカイリム』にしても、「滞在するだけならとても楽しいけど住民票まではいらないかも」と感じるオープンワールド型ゲームは多い。例えば『シャドウ・オブ・モルドール』はものすごく面白かったけど、モルドールの住民票はいらないと思った。世界中あまねく不潔そうだし、食い物はまずそうだし、主人公以外はほぼオークしかいないし。

でも、本作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のハイラルの住民票は欲しい。世界は美しく清潔な感じがするし、うまそうな料理が工夫次第でいくらでも作って食べられるし、たくさんの人や動物や魔物が暮らしているし。世界の広さも尋常ではなく、どこへ行っても必ず何らかの仕掛けが用意されている。いちいちSwitch経由で滞在するぐらいなら、もういっそのこと住民票とって移住したくなる……そんなゲームだと思った。

とにかくグラフィックが本当に美しい。PS4の『Horizon Zero Dawn』あたりと比べたらさすがに見劣りするように思えるけど、特に風景や自然現象の巧みな描写は静止画では伝わらない説得力があり、「この世界に住んでみたい」と思わせる魅力に富んでいる。

これまでのゼルダシリーズの世界もじゅうぶん魅力的だったけど、それはあくまで20世紀的な「ゲーム進行のために存在する世界」だった。本作では、昨今の潮流である「生活感のあるリアルなオープンワールド」が構築され、そこにゼルダシリーズの様々なゲーム要素が緻密かつ大胆に組み込まれている。言うのは簡単だけど「生活してみたいと感じさせる魅力的な世界」が丸ごと作られている。制作者の方々は本当にすごいと思う。すごいとしか言いようがない。まだまだ序盤みたいなので、これからの展開がとても楽しみです。

しかし、住民票が欲しくなるようなゲームだということは、長い時間を費やすことが避けられないゲームだということでもある。住民票所有欲をかき立てることでおなじみ『どうぶつの森』のSwitch版が出たら、どんだけの時間をつぎ込むことになるんだろうか。せめて花の水やりぐらいは自動化してもらえるとありがたい。ゼルダと関係ないですが。

写真左は1993年の『ゼルダの伝説 夢をみる島』。当時は「モノクロ・番外編ながら、携帯ゲーム機でも本格的なゼルダが遊べる!」と絶賛されていましたが、その24年後に番外編ではない「本物」のゼルダが「携帯可能なゲーム機」でどこでもプレイ可能になるとは……。当時は思ってもみませんでした。



関連リンク

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