ZEROからIVまで……“究極の同窓会”がついに実現『スーパーストリートファイターIV』

カプコンXbox360/PS3■2010年4月28日発売■格闘■4,990円(税込)■★★★★★
人気格闘ゲームのシリーズ最新作。前回の『ストIV』のシステムやバランスを調整しつつ、新たに2人の新キャラクタと過去のシリーズ作品のキャラクタを多数追加。オンラインを含むゲームモードも一気に充実した。

そもそも、別々の格闘ゲームのキャラクタを集めてひとつの作品にして遊んじゃおうという発想は、1993年にSNKが発売した『餓狼伝説SPECIAL』からだったと思う(『餓狼伝説』の1・2作目の面々が総出演)。私も当時はネオジオを持っており『餓狼伝説SPECIAL』も買ったけど、違うゲームの人たちが一堂に会する「同窓会っぽさ」はとても新鮮でわくわくしたもんだった。「隠しキャラ」として『龍虎の拳』のリョウ・サカザキが出てくる、というのも当時はとても斬新だった。この同窓会路線は、SNKでは『KING OF FIGHTERS』シリーズに引き継がれていく。
一方、カプコンもまた『ストリートファイターZERO』シリーズで同窓会路線をどんどん推進していった。「今度の同窓会にはアイツが来るらしいよ」の“アイツ”が誰であろうとそれなりに盛り上がるわけで、回を重ねるごとにキャラクタの数はどんどん増えていった。最終的に『ストリートファイターZERO3』では総勢25人(2005年のPSP版『ストリートファイターZERO3↑↑』に至っては何と37人)という大所帯となっていた。

確かに『ZERO』シリーズは楽しかったけど、特に『ストリートファイターZERO3』の楽しさはちょっとパーティゲームのノリみたいになっていた感がある。1997年の『ストリートファイターIII』は、この同窓会路線をいったん断ち切って、シンプルで奥が深く硬派な王道路線の格闘ゲームを一から仕切り直したい、という意図があったんじゃないかと思う。

しかし、キャラは11人しかいないしシステムは奥深くてストイックすぎるし、何よりも「知ってるキャラクタが全然いない」という、『ZERO』シリーズにおける同窓会路線の気安さとは真逆の雰囲気を持つ『III』はずいぶん敷居が高く感じられた。私もドリキャス版やPS2版の『III』は買ったけど、いまだにブロッキング(敵の攻撃を受け止めて優位に立つシステム、入力タイミングがシビア)すらマスターしていないし、ゲーセンでは結局一度も遊んだことがない。カプコンが本当にやりたいことって同窓会じゃなくて『III』の方なんだろうなと思ったけど、もはや「格闘ゲームとしてどうなのか」よりも「どのキャラクタが出ているのか」のほうがずっと重宝される時代になっていた、ということなのかもしれない。

そして昨年の『ストリートファイターIV』と今回の『スーパーストリートファイターIV』で状況は変わった。登場キャラクタは何と総勢35人だそうである。II系のキャラクタは全員いるし、ZEROやIIIからもかなりの人数のキャラクタが登場している。毎回キャラクタをほぼ総入れ替えでリリースされてきた『ストリートファイター』シリーズのナンバリングタイトルなのに、完全に同窓会っぽい雰囲気の作品になった。カプコン格闘ゲームの近作もタツノコプロやマーベルといった版元の強力なキャラクタとばっちりコラボレーションしてるし、商業的には人気キャラクタが登場しないと格闘ゲームって成立しづらいご時世なんだろう。

といっても、本作はただの「にぎやかで愉快な同窓会ゲーム」ではない。私は今回の『スパIV』からの途中参加だけど、格闘ゲームとしてはシステムもグラフィックもとても良くできた傑作である。システムは『II』をベースにしつつセービングアタック(タメ攻撃と当て身を合わせたような爽快なシステム)のようなモダンな仕組みが加わり、『スーパー』ではウルトラコンボが2種類から選択できるようになっている。『III』以降の格闘ゲームに比べてシステムがシンプルでわかりやすいのが実にありがたい。特に、空中ガードや空中ダッシュといった要素がないのはとても嬉しかった。『ストIIダッシュ』がシリーズ中いちばん好きな私には、フェイントに引っかかってジャンプしたら撃墜されるのみ、というのがとてもしっくり来る感じであった。過去の作品の曲をアレンジしたBGMもいちいち良い。エンディングのメドレーなんて鳥肌もんだ。

私がちょっと意外だったのは、「硬派な王道路線」と「同窓会路線」は両立できるということである。ちっとも気づかなかったが、いつの間にか格闘ゲームというジャンルそのものが「既存の人気キャラクタたちの同窓会=異種格闘技戦」の場になりつつあるのかもしれない。格闘技のことはよくわからないが、格闘ゲームの世界で商業的に成功を収めるには「新ルールの格闘技を立ち上げる」時代から「いかに魅力的なマッチメイクを実現するか」が重視される時代に移った、ってことか。しかも、実際の格闘技の世界では人気選手が移籍したり歳を取って引退したりするけど、永遠に歳を取らない初代『ストII』の12人をカプコンが独占しているというのは、格闘ゲームの世界では途方もなく大きなアドバンテージなんだな、と改めて思った次第だ。

スーパーストリートファイターIV (通常版) - PS3

スーパーストリートファイターIV (通常版) - PS3

ところで、今回は『スパIV』用にMAD CATZの「ファイトパッド」を追加購入した。デカいけど案外使いやすい。

ファイトパッド for PlayStaion 3

ファイトパッド for PlayStaion 3

ワイヤレスということなんでBluetoothなのかと思っていたら、意外にもドングルをUSBにつなぐタイプだった。試しにマックやWindowsパソコンにつないでみたら普通に使えてちょっとラッキーな気分。マックでゲームなんてやらないんだけどね。