もし1980年にiPhoneがあったら『Squareball』が作られてたかもしれない

■Finn Ericson■iPhone/iPod Touch■アクション■115円■★★★★★
8ビット機の時代を思わせるシンプルなグラフィックが印象的なアクションゲーム。上下に反射し続けるボールを、画面を左右に動かすことでうまく操り、ブロックを壊してステージクリアを目指す。
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日本のテレビゲーム史は、ブロック崩し専用機を経ていきなりファミコンから始まっているような印象があるが、アメリカでは前史としてATARIApple IIといったプラットフォームがヒットしてポピュラーな地位を獲得しており、ファミコンよりも低いスペックを駆使したさまざまな力作が発売されていた。今回の『Squareball』は、そんな時代をほうふつとさせる傑作である。AppBankさんのレビューを見逃してたら、この名作と出会えなかったかもしれない。そう考えただけで背筋が寒くなる思いだ。うそ。でもいつもアプリ購入の参考にさせてもらってます。

本作をプレイして思い出すのが、ATARIApple IIの『Pong』『Breakout』『Ballblazer』『Pitfall』『Choplifter』といったゲームソフトだ。で、例えば『Ballblazer』はiPhone版が出ているわけだけど、これは「iPhoneの性能でリメイク」された作品だ。こうしたリメイク作品はけっこう多く、任天堂ナムコが過去の作品のグラフィックを描き直して発売することは珍しくないし、『Choplifter』もセガがリメイク版を発売している。以下は新旧『Choplifter』の画面だ。セガ版はオリジナル版をキレイに作り直している。

しかし本作はそうではない。これは「1980年代のテレビゲームの文法でゼロから作られたiPhoneゲーム」だ。グラフィックもシステムもとても禁欲的で、ボールは上下にしか動かないし、操作は左右のみ。パワーアップなどは多分存在しない。序盤では画面スクロールさえも左右だけに限定されている。でも、iPhoneの性能を活用して、21世紀の新作ゲームとしてしっかり作られている。タッチパネルやチルト操作がとてもしっくり来るように絶妙なチューニングがなされているし、画面には3Dグラフィックによる奥行きが付けられている。OpenFeintによるソーシャル機能も付いている。クリアしたステージは記録されるので、毎回最初からやり直す必要はない。


PSGや波形メモリみたいな音色のメロディアスなサウンドもすごく良くできていて、画面の雰囲気にぴったり合っている。そして、グラフィックが極端にミニマルなせいで、物語を頭の中で勝手に想像してしまう。絵はずっと同じ単色のくせして「聖堂」とか「宇宙ステーション」「海」とかムチャクチャな舞台設定がなされているが、熱中してくるとあの単純な絵が何だか本当に広大な宇宙ステーションに見えてくるから不思議だ。ちょっとうそ。

まだ最後まで行ってないけどかなりステージは多いみたいで、どんどん難しくなっていく。でも、それに比例して自分もどんどん上達していくのが感じられてとても楽しい。本作は、iPhoneならではの操作性が1980年代ゲームのシンプルなテイストと見事に結びついた傑作に仕上がっている。これで115円なら買わない理由はない。Lite版もイージーモードも用意されているので、iPhoneを持ってたらぜひ遊んだ方がいいと思う。それにしても、3x5ピクセルのビットマップフォントってなあ。いい度胸してるわ。
ところで、もし1980年代に『Squareball』が出てたらこんな感じでしょうか。