「3DS」と「美空ひばり」と『アフターバーナーII』

■3D アフターバーナーII■セガ/M2■3DS■2013年12月18日■シューティング ■800円■★★★★★
1987年に登場し、体感ゲームの頂点との呼び声も高いアーケード用シューティングゲームの移植版。戦闘機を操って敵機をミサイルで撃墜していく。3DSならではの立体視でプレイ可能。原作でカットされた音楽のメロディパートも聴くことができる。アレンジ要素の強い「スペシャルモード」も収録されている。

公式サイト



オリジナルのアーケード版から26年を経て登場した3DS版『アフターバーナーII』は、ただの移植版ではなかった。

画面も音楽も含めて実に高い移植度を実現しているうえ(これだけでも本当に有り難いことなんですが)、3DS裸眼立体視によって、本作の根幹をなす「敵機の撃墜」と「ミサイルの回避」という要素のバランスがより鮮明になり、原作の時点で極めて高かった完成度がさらに高まっている。

開発元のM2さんによる移植版でおなじみ「筐体モード」も健在だ。いい意味でぎこちなく画面が傾き、可動部のモーター音が鳴る。街道沿いのゲーセンにあったダブルクレイドル版の筐体のことをしみじみ思い出した。ついでにBeepの付録のソノシートのことも思い出した。

さらに今回は「スペシャルモード」という新たな要素が加わった。敵機撃墜でゲージをためてバーストボタンを押すと、ジョン・ウー風のスローアクションに突入。のろのろ動く敵機群に片っ端からミサイルをお見舞いできる。同社の『アフターバーナー クライマックス』にも似ているが、ゲージが異様にたまりやすい上に残機がどんどん増えるのでインフレ気味にガンガン行けてとても楽しい。これ単体で『アフターバーナーIIダッシュターボ』ぐらい名乗ってもいい内容だと思った。話はそれるが、M2さんに開発してほしいなあ。『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』。



これまで多くの歌手やものまね芸人の方々が、美空ひばりさんの「川の流れのように」を歌った。ひばりさんに歌唱力で少しでも近づこうとする人、顔を真似る人、なるべく自己流に徹する人、東京ドーム公演の時の衣装をそっくりに再現する人……。ひばりさんの持つ様々な要素のいくつかを部分的に選び、デフォルメし、無理なところは諦める。ひばりさんのすべてを完璧にコピーすることはできないからだ。

1987年に発売されてからそろそろ30年近くが経つというのに、いまだに根強い人気があり、数えきれないほどの移植版が存在し、いまだに新たなプラットフォームへ移植される『アフターバーナーII』。一連のセガ体感ゲームの中でも突出した完成度と面白さに加えて、いかに高性能なゲーム機であっても再現のしようがない、あの巨大な可動筐体が醸し出す独特のオーラとかロマンみたいなものが、プレイヤーの心をつかんで離さないのではないかと思う。

アーケード移植界の(そんな界あんのか)美空ひばりさんがあるとすれば、それは『アフターバーナーII』じゃないかと思うのである。

で、以前父に借りたCDに、天童よしみさんの「川の流れのように」が収録されていた。私は音楽のことはよくわからないけど、天童さんはその優れた歌唱力を駆使し、ひばりさんの原曲を尊重しつつオリジナルの解釈を加えることで、もはやものまねでも完全コピーでもなく、単なるカバーの域をも越えた「川の流れのように」となっているように感じたのである。私がこの3DS版『アフターバーナーII』をプレイして思い出したのが、この天童よしみさんの「川の流れのように」だった。だから何なんだと言われると困るけど。

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