iPhoneの無料ゲーム&ウォッチアプリと「思い出税」、そして「邪魔な指」問題

■STUDIO TOMATO■iPhone/iPod Touch■アクション■無料■★★★
任天堂ゲーム&ウォッチ『オクトパス』のクローンアプリ。たぶん無許諾。
(iTunes Storeへのリンク


いつの時代も「思い出」というのはツブシが効くものである。たとえば任天堂のような企業は、人々の思い出にいわば「課税」する権利を持っているとさえ言える。ファミコンミニやらバーチャルコンソールやらで、われわれゲーム好きが任天堂に納税した「思い出税」の額たるや相当なものである。私はスーパーファミコンの『スーパーマリオコレクション』も買った。絵や音が違う『スーパーマリオブラザーズ』を、なんやかんやで4回ぐらい買っているような気がする。
そして、今回の『Octopus - original ocean adventure』、ゲーム&ウォッチ『オクトパス』のクローンだ。ファミコンミニバーチャルコンソールと根本的に違うのは、これが無料であることと、作ってるのが任天堂ではないということである。この上なくうさん臭い。
実は2008年にも『オクトパス』のクローンアプリが発売されたことがあるが(現在はたぶん発売中止)、iPhone・iPod touchラボの管理人さんが作者に問い合わせたところ

ゲーム内に登場するキャラクターや画面デザインは商標登録されておらず問題無い。これまでにも(他のプラットフォームで)ゲームウォッチのポーティングの経験があり、商標登録されているドンキーコングシリーズ任天堂から指摘されたものの、それ以外のタイトルについては問題になっていない

という回答をもらったそうだ。つまり「ドンキーコング」は商標登録されてるけど、水夫やタコや商標登録されてないからオッケー、ということらしい。
私は商標登録のことはさっぱりわからないし、海外の商標はさらにわからないので、いちおう参考までに日本の商標を検索してみた。
http://www1.ipdl.inpit.go.jp/syutsugan/TM_AREA_A.cgi
任天堂が登録した「OCTOPUS」は確かにあった(第4222163号)。「ゲーム&ウォッチ」も登録済み。でも水夫やタコは見つけられなかった。当たり前か。そんなに大ざっぱな名前では登録できないんだろう。
たとえば「ピーチ姫」は? と思って検索したら登録されていた(第2059757号)。もちろん「スーパーマリオ」も(第2095611号)。

ゲーム&ウォッチは、不振の任天堂を救うぐらいの大ヒット商品だったが、商標で他社の模倣をおさえることはできなかった。その反省が、ファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』以降の積極的なキャラクタ商標化につながっていった、ということなのかな。ほんと勝手な憶測ですけど。
で、『Octopus - original ocean adventure』である。本当にそのまんま『オクトパス』だ。iTunes Storeに載っている作者の解説文がなかなか奮っている。

ダイバーたちを率いて、深海の宝物を目指せ。海底を守る巨大ダコの凶悪な触手から彼らを助けよう。
このゲームは誰もが子供時代から知っている、昔のロシアのゲームのリメイク。グラフィックは忠実に再現しつつ、新たな機能と操作性を加えている。

特長:
・オリジナル版のデザイン
・openfeint対応
・簡単で直感的な操作
・短時間で楽しめる
・クセになる面白さ
・子供時代の思い出

「ロシアのゲーム」というのは、ゲーム&ウォッチのクローン商品のことみたい。たとえばこれ。
http://page10.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/m73575751
要するにこの『Octopus - original ocean adventure』の作者は、「商標はクリアしてるから問題ない」はずなのに「元になってるのは任天堂製じゃなくロシアのクローン商品だよ」という保険を掛けてるものと思われる。もしくはこの人は商標うんぬんの話は知らないのかもしれない。
別に私はこの人を糾弾するつもりはない。大して悪気があるとも思えないし、もっとむちゃくちゃな権利侵害をしている業者もたくさんいる。でも、ちゃんと任天堂に「思い出税」を納めて
あの「ゲーム&ウォッチ」がキーホルダーに!|HMV&BOOKS onlineニュース

こういう商品を発売している企業もあり、その税を最終的に負担するのはわれわれ消費者である。そもそも『Octopus』という名前だけはおそらくアメリカでも商標登録されてるんだろうし、絵も音もそっくりなアプリとなれば、任天堂の削除依頼をアップルが断る理由もメリットもあんまりなさそうな気がする。いくら無料アプリとはいえ、今回の『Octopus - original ocean adventure』に対しても任天堂はいつまでも黙認してはいないんだろうな、きっと。ストアから消えるのも時間の問題なのかもしれない。
話は変わるが、いわゆるバーチャルパッドの操作に不満を持っている人はかなりいるんだろうと思う。「"指が邪魔" iphone」で検索すると2万件もヒットする。で、iPhoneアプリとしてこの『Octopus - original ocean adventure』を見た場合、「コントローラ部と画面部を分けるととても遊びやすい」という当たり前だけど新鮮な発見があった。

バーチャルパッドとボタン4つが画面のキャラとモロにかぶる『ストリートファイターIV』の操作系も、もう少しどうにかならないもんだろうか。

↓こういうモードもあれば、かなり遊びやすくなると思うんだけど。どうでしょ。