任天堂・社長が訊くシリーズに『ゲーム&ウオッチ』が登場、“町工場時代”の貴重なエピソードを披露


社長が訊く「ゲーム&ウオッチ」

ゲーム&ウオッチ ボール」の復刻版がクラブニンテンドーのプラチナ特典として今月発送になることを記念して、社長が訊くシリーズに「ゲーム&ウオッチ」が登場しています。当時現場で活躍されていた重鎮の方々による、いわば“町工場時代”の任天堂の話が満載です。

岩田
加納さんは、Mr.ゲーム&ウオッチと呼ばれる
キャラクターのデザインから、外の箱に至るまで、
デザインに関わることは何でも担当された
んですよね。


加納
そうです。
それこそ“何でも屋”に近かったです。
でも、それはわたしだけでなく、
スタッフみんなが何でも屋みたいな時代でした。

岩田
そもそも当時は、プログラマーと企画者とハード技術者は
いまほど職制が明確に分かれていなかったんですよね。


出石
その通りです。


岩田
だから、ハード技術者として入ってきた人でも、
プログラムも書いたし、アイデアも出したし、
場合によっては工作もしたし
(笑)。


山本
はい。工作もしました。
それに最後は量産の段取りまで担当しました。


出石
さらに、最終的には
コマーシャル撮りにも行きました
(笑)。

出石
当時のゲームは
ハード屋さんがつくっていたんです。


岩田
ひとつのゲームのために
それ専用のハードをつくっていたんですね。


出石
だから、ハード屋さんが
「ここのスピードはもっと速くしたい」と思ったら、
はんだごてを持ってきて配線を変えたりしていました

それをみんなで遊んでもらって、
「う〜ん、もうちょっとかな」とか言いながら
延々と調整する作業を繰り返し、
「これでいこう!」となってから量産に入っていたんです。

岩田
ちなみに、人づてにお聞きした話なんですが、
そもそもゲーム&ウオッチが誕生することになったのは
横井(軍平)さんが新幹線のなかで
電卓で遊んでいる人を見たのがキッカケだった
とか。

加納
たとえば時刻を「PM10:00」というように
「AM」と「PM」で表示すれば、
4桁で28セグメント必要だったものを減らすことができます。

岩田
はい。


加納
そこで、千の単位を「1」しか表示しないようにすれば・・・。


岩田
なるほど。「AM」と「PM」と「1」で計 3セグメント。
数字は7セグメントを使いますから
4セグメントの節約になりますね(笑)。


加納
節約できるんです。
わずか4個のセグメントさえも遊びに使いたかったんです。
なので、最高得点は「1999」でした。

岩田
その試作機は、ゲーム&ウオッチよりももっとでかい、
ランプがついたもの
だと聞きました。
それはいったいどのようなものだったんですか?


(略)


加納
スモークのアクリルを貼ったりとかして、
ランプが点いたところだけ映像が見えるようにしていました。


出石
ですから、ソフトをつくるというよりは
工作のように、切ったり、貼ったり、穴を開けたりと
手作業でやることがけっこう多かったんです。


岩田
まるで工作少年たちが集まって
でかいゲーム&ウオッチをつくっていくような感じですね。
それはどのくらいのサイズのものだったんですか?


加納
先ほどの原稿と同じくらいですから
A4サイズくらいですね。


岩田
A4サイズくらい、でかいゲーム&ウオッチ
ゲームとしての面白さを確認した
と。


山本
実際に動かしてみて
「もうちょっとここは変えたほうがいい」とか、
「もっと見やすくしよう」とか。

他にも当時書かれた企画メモやイラストの資料なども掲載されていて、ほのぼのする楽しい記事でした。任天堂の歴史をどんどんさかのぼっていただいて、社長が訊く花札」なんかも読んでみたいかも……。

なお、今回の復刻版がなぜ『オクトパス』や『ファイア』や『パラシュート』じゃなく『ボール』なのかちょっと疑問だったんですが、『ボール』はゲーム&ウオッチ第1作のタイトルだったから選ばれたんですね。知りませんでした。ぼちぼち配送されるころですかねー。楽しみです。