トルネで再認識した、「面白いテレビ番組はまだたくさんある」ということ


ネットも携帯電話もなかった時代が思い出せない、などと言われて久しい。気がついたら、世の中は面白いサービスやらソフトやらハードやらであふれかえっている。
楽しみが増えるのは結構だが、何もかもが中途半端にしか楽しめなくなった気もする。せっかく買ったゲームソフトや本は山積みだし、図書館で本を借りても読まずに返すこともある。RSSフィードやInstapaperの未読数もなかなか減らない。これでiPadなんて買った日にはどうなってしまうのか、今から不安である。
いちばんひどいのがテレビの録画だ。ここ8年ほど、パソコンのアナログチューナーで手当たり次第に番組を予約録画・エンコードして全部保存しているが、最近は保存しただけで満足して見ないままの番組の方が多くなってしまった。
アナログ放送のくすんだ映像に魅力を感じなくなったというのもあるけど、一番の理由は「保存していつでも見られるテレビ番組に、ありがたみが感じられなくなった」というのが大きい。数々の番組ファイルを保存して数テラバイトに膨れ上がったハードディスクを見るたびに、「いつか見るから保存しとこう」の「いつか」は永遠に来ないのかもしれない、などというありがちな思いを日に日に強くしている今日このごろだ。
しかし、トルネの前ではそんな感傷は無意味である。トルネは地デジチューナーだから映像はとてもキレイだが、その容量的な負荷は半端ではない。私はPS3の内蔵ハードディスクだけで録画しているが、この空きがせいぜい60ギガバイト程度(元々の容量は120ギガバイト)。トルネは1時間の録画で6ギガバイト程度を消費するのでせいぜい10時間分ということになる。「いつか見る」の「いつか」はたった10時間分の猶予しかないのである。
一方でトルネは、とてもよくできた番組表やソーシャルな人気番組ランキング、そして秀逸で軽快なインターフェースによって、「テレビ番組を見たい」という気分と「テレビ番組を実際に見る」という行動との間の距離を一気に狭めた。番組探しも録画予約も再生も、とても簡単かつ楽しく行える(その番組が楽しいかどうかは別だけど)。冒頭5分でつまらない番組とわかれば「軽快なインターフェース」で気軽に消去できる。さらにPSPを使えばリモートプレイも書き出しプレイもできるし、字幕+2倍速再生でさっさと見ることも可能だ。
これが100時間とか1000時間とかになると、フォルダだのタグだのブルーレイ書き出しだのと色々な注文がつきそうだけど、「10時間分のバッファに番組を録画して見て消す」という使い方に限れば、トルネは本当に優秀な地デジレコーダーだと思う。

こうして、トルネによって「予約→録画→視聴→消去」の新陳代謝がものすごく活発になり、以前は見なかったようないろいろな番組を見るようになってみて改めて感じたのが「面白いテレビ番組はまだたくさんある」ということだった。逆説的だけど、無尽蔵に録画・保存していたころには見落としていた面白い番組を、たった10時間のバッファしかないトルネではちゃんと見て楽しむことができるようになったというわけだ。正直そこまでトルネに期待してなかったので、これはうれしい誤算だった。
あと蛇足だけど、「NHKはいろんな意味ですごい」というのも再確認したことの一つだ。総合テレビには、民放じゃありえないような贅沢で豪華な番組がたくさんあってもちろんすごいけど、教育テレビはまた違う意味ですごい。「美の壷」(世の中の“美”を解説する番組。草刈正雄語り部)から「スザンヌの『勉強できない!』脱出計画」(勉強が苦手な高校生向けの教育バラエティ番組。芸人さんがいっぱい出てた)まで、ありとあらゆる層の国民を啓蒙するために、受信料で制作された番組が日々淡々と垂れ流されている様は、ある種シュールですらある。視聴率どんだけあるんだろう。
というわけで、テレビ番組を録画するばかりで見なくなったという人や、面白い番組を見たいけどおっくうだという人は、トルネを使ってみるといいかもしれないと思った。できれば外付けハードディスクなしで。

torne (トルネ) (CECH-ZD1J)

torne (トルネ) (CECH-ZD1J)