3DS『いつの間にテレビ』の「視聴率」を公表したらどうかな
任天堂が21日にサービスを開始した『いつの間にテレビ』は、3DSに専用ソフトをインストールして(eショップから無料でダウンロード)スリープ状態で放置しておくと、数分の長さの3D番組が毎日3本、無料で自動的に3DS本体へダウンロードされる、というのが基本的な仕組みである。番組制作には日本テレビ・フジテレビが参加しているという。
「番組は最大6本までストックされ、古い順に消えて行く」「『いつの間にテレビ』ソフトを起動するといきなり再生が始まる」など、いわば「番組6本分のバッファ入りでチャンネルが一つのテレビ」という仕様。各番組にはCM映像が挿入され、3DSの下画面には静止画広告とリンク(ブラウザが起動する)が表示される。
ものすごくシンプルでわかりやすい仕様だ。広告手法の弱さ(下画面からウェブへの連携とか)やセグメントの扱いなど改良の余地はあるけど、広告モデルの動画配信を行う上でこの『いつの間にテレビ』のシステム自体は至極まっとうな感じがする。
問題は、今のところ番組が今ひとつ面白くないということだ。実にもったいないと思う。
もし仮に国内で3DSが200万台稼働していて、その半数が『いつの間にテレビ』 を見ているとしても視聴者数は100万。テレビジョンの視聴率なら1%程度だ(3DSの稼働率と『いつの間にテレビ』のインストール率によっては、1%どころかもっと低い可能性もある)。
『いつの間にテレビ』 の番組が今ひとつ面白くない理由は、「大資本を投下して視聴率10%が合格点、20%で大成功」という厳しい世界であるテレビ業界の論理や予算方式や方法論を用いて「視聴率1%が前提の番組」を作ろうとしているところにあるのではないだろうか。
私は番組制作のことは何もわからないんだけど、「視聴率1%(100万人)」という条件で面白い番組を制作するなら、任天堂がテレビ局を通さずに代理店・制作会社・クリエイター・広告主と直接組んでみたほうがいいのでは? と思う。でも『いつの間にテレビ』の内部は日テレ・フジの「もう一つのチャンネル」みたいな論理で動いていて、テレビ局の頭越しに番組内容をコントロールすることはできないのかもしれない。だけど、「(台数が限られる)3DSでしか見られない広告付き3D映像を低予算で制作・配信してペイしつつ視聴者の満足度も高める」ためには、テレビ局のノウハウにすべてを委ねていては厳しいんじゃないだろうか。
少なくとも今のところは、視聴者(と広告主)(と演者さん)は若干置いてけぼりにされてる感じだ。その上、当事者である任天堂とテレビ局でさえ、あんまり得をしていないような気がする。
大手テレビ局だけでなく、個人を含む小規模なクリエイターが参加できたらいいのになと思うけど、かなり難しいんだろう。あるいは、任天堂が3DS発表時に告知していた「3D映画の予告編の配信」や、ニンテンドーeショップのゲーム動画の配信なども『いつの間にテレビ』と統合・連携して、映像コンテンツチャンネルとして一つにまとめてもらったほうがユーザーとしては楽しく、使いやすいのではなかろうか。とにかく『いつの間にテレビ』のシステム自体は『Wiiの間』に比べてもかなり実用的・現実的に完成されているので、コンテンツ面でも今後どんどん発展していってもらえたらいいなと思う次第だ。
ところで、『いつの間にテレビ』に「日本テレビ制作の番組とフジテレビの番組制作の視聴率が表示される」機能を付けてみてはどうだろうか。YouTubeの「アクセス数」と違って、自動ダウンロード=100%という母数と実際に再生された回数の比率は視聴率として扱えるはず(実数は公表しなくてもいいと思う)。デイリー/週間/月間ランキングがあれば番組選びの指針にもなるし、「視聴率」そのものが面白いコンテンツにもなりうる。
もちろん日テレとフジそれぞれの平均視聴率も公開することで、2局間の競争を促進する狙いもある。制作側にしか通知されない数字が一般にも公表されることで、今のまま淡々と番組を配信し続けるよりも番組を作る側の張り合いにもなるし緊張感も出るはず。もしかすると最初からムリって気もするけど、どんなもんでしょう?