苦肉の策が大当たりか『New スーパーマリオブラザーズ Wii』

任天堂Wii■2009年12月3日発売■アクション■5,800円(税込)■★★★★★

4日で93万本だそうである。まさかこんなに売れるなんて、当の任天堂でさえちょっと驚いてるんじゃないかな。

私はまだワールド2が終わったとこなんだけど、確かに出来はものすごく良い。かといって「大傑作」かと言われるとそういう感じでもなく、「ケチがつけられないゲーム」とでも言おうか。遊ぶ人が不満に思いそうな膨大なポイントを一つ一つしらみつぶしに取り除いたんだろうなと思う。5点とさせてもらったけど、これは「不満も色々あるけど大傑作」という感じじゃなく「不満のない秀作」という感じ。
だけど何だろう、この有り難みの薄さ。ものすごく楽しいけど、有り難くない。いきなりマップやアイテムの概念が加わった『スーパーマリオ3』とか、いきなり画面がきれいになった『スーパーマリオワールド』とか、いきなり3D化された『スーパーマリオ64』みたいな作品に対する有り難みが、今回の『NewマリオWii』にはあんまり感じられない。本作が3年前のDS版『New スーパーマリオブラザーズ』がベースになった姉妹作(って言い方もよくわからないけど)だから仕方ないのかもしれないけど、やってる事はDS版と同じく2D時代の『マリオ3』と『マリオワールド』とあんまり変わってない、というのが正直な印象だ。

スーパーファミコンの『スーパーマリオワールド』『ヨッシーアイランド』で2Dのスーパーマリオを完成させた任天堂は、ニンテンドウ64の『スーパーマリオ64』でシリーズを3D化した。これが大ヒットし、世界中(の特に玄人筋)から絶賛された。これが、おそらく「これからのマリオは全部3Dで行く」ぐらいの自信を任天堂にもたらしたんじゃないだろうか。実際、ニンテンドウ64の2Dスーパーマリオ路線は傍流の『ヨッシーストーリー』に枝分かれして行く。

でも、ゲームキューブの『スーパーマリオサンシャイン』、Wiiの『スーパーマリオギャラクシー』で3D路線をどんどん突き詰めていった結果、「ゲーム好きにはたまらないけど敷居が高すぎる」みたいなシリーズになったように感じる。私も『ギャラクシー』を家族がいる茶の間でエンディングまでやったけど、家族はみんなただ見てるだけ。「僕にもやらせてとコントローラーの奪い合い」みたいな事にはまるでならなかった。

だから、Wiiでも2Dのスーパーマリオが出た、ってのは私には任天堂の苦肉の策のようにも感じられるし、それがまさかここまで売れるなんて予想してなかったと思う。任天堂としては、マリオという最高のキャラクタを使って3Dアクションの可能性を探って行きたい、というのが本望なんだと思うが、2Dと3Dの間の敷居はまだまだ高い。もし『ギャラクシー』が4日で93万本売れていたら、この『NewマリオWii』は存在しなかったかもしれない。確かに『NewマリオWii』はとても面白いし、2009年になっても任天堂が本気で作った2Dアクションで遊べるなんて最高だなとも思うが、できたら『ギャラクシー2』もなおざりにしないでくれたらいいなと切に思う次第だ。

話は全然変わるけど、Wiiの画面をエミュレータでHD出力するとこうなる、という映像が最近話題になってる。このHD出力された画面を見ると、マリオなどのポリゴンモデルがキレイなのはわかるんだけど、スコアの文字や左上のマリオやコインのアイコンといったビットマップ画像までがくっきりしている。これってビットマップデータがすでにHD表示に耐えられるサイズで内部的には用意されてるってことなんじゃないのかな。HD表示機能のついたWiiへの布石だったらうれしいな。案外すぐ出たりして、Wii HD。ゲームキューブバーチャルコンソールニンテンドウ64のソフトも720p化されるといいな。フラットシェードで720pの『スマブラ64』なんてシュールで逆にありかもしれない。