ソニーとマイクロソフトがE3で植えた苗をニンテンドー3DSが踏みつぶして行った
やっと任天堂のニンテンドー3DSが発表になり、今年のE3もプラットフォーム3社の戦略が出揃った。様々な発表があったにもかかわらず、ソニーは『デッドスペース2』とPSP版『ゴッドオブウォー』の新作ぐらいしか印象に残ってない。マイクロソフトは……あの小型化&Wi-Fi内蔵版の新型Xbox360を見て、私の頭に浮かんだのが映画「風と共に去りぬ」の最後の場面である。レットがさんざん袖にされ続けてきたスカーレットに突然愛を告白されても時すでに遅く、レットにはすっかりその気は失せてた、っていうやつ。せめて2年前にWi-Fiを内蔵してACアダプタを小さくするぐらいのことはしてほしかった。まあ日本市場なんてどうでもいいと思ってるのかもしれないけど。
で、ソニーとマイクロソフトが今回のE3で地道に植えてきた苗をニンテンドー3DSが全部踏みつぶして行ったって感じがする。
『マリオカート』『nintendogs+cats』『どうぶつの森』『スターフォックス』『パイロットウィングス』といったローンチタイトルの強烈な既視感(相変わらずスーファミやニンテンドウ64の時代をループしてるような感じ)は、今回に限っては「おなじみのタイトルなら立体視の様子が想像しやすい」という意味でプラスに働いてる気がする。「マリオや犬が飛び出して見える」というのは、3DSの魅力を形容するポイントとして身もふたもないぐらいわかりやすい。しかし、WiiやDSでさんざん出る出ると噂されてきた『パルテナの鏡』だったが、まさか3DSで作ってたとは。
しかも、HD全盛のこのご時世に、3DSのメイン画面(3.53インチ)の解像度が800x240ピクセル(右目・左目用に割り当てているので実質400x240ピクセル)というのはすごい割り切り方だと思う。3DS自体のグラフィック性能やバッテリーの持ちを勘案しつつ、ソフトの制作費高騰の抑止も期待できるんだろう。ピクセル数では1280x720ピクセルの約1/5程度しかない。3.5インチで960x640ピクセルの液晶を採用したアップルのiPhone4とは対照的で、両社の戦略の違いがくっきり分かれて面白い。3DSでは旧DSのソフトも強制的に立体視できたらいいんだけど、さすがにムリっすかね。
それに引きかえ、ずいぶん地味だったのがWiiだ。Wiiモーションプラスに対応し、まったく新しい水彩みたいなグラフィックになった『ゼルダの伝説』は、ゲーム好きにはうれしいけどニンテンドー3DSの前では新鮮味は薄い。あと、『メトロイド』は主観視点と客観視点の切り替えがものすごくスムーズになり、サムスの顔がはっきり見えているのもゲーム好きにはうれしいけど(以下略)。任天堂はWiiをどうするつもりなんだろう。次世代Wiiまでの中継ぎとして、既存タイトルが自動的に1080p/720pになるWii HDがいつか絶対に出ると思ってたんだけど、そんな中途半端なプロダクトに戦力を割かないのが任天堂ってことなのか。
ニンテンドー3DSの全容が明らかになり、これでモバイルゲームが一気に面白くなってきた。任天堂の3DSとそれを迎撃するソニーのPSP携帯、そこに横車で突っ込んでくるアップル陣営、という感じか。ソニーにちゃんと迎撃する準備があるかどうかも含めて、今後が楽しみだ。